Jリーグクラブが指定管理者になると何が起きる?――札幌・埼スタ・花園・ZOZOマリンの具体例から考える

Jリーグ構造分析

プロスポーツクラブが、ホームスタジアムの指定管理者になるケースがあります。

クラブが運営に入れば、試合日程、飲食や物販、広告、イベント、施設演出などを一体的に考えやすくなります。

一方で、クラブはその施設を最も多く使う「最大利用者」でもあります。

できるだけ安く、希望する日に使いたい利用者と、他の利用者を公平に扱い、施設を適切に維持すべき管理者の二つの立場を同時に持つことで、潜在的な利益相反が生まれてしまいます。

指定管理者制度を巡っては、「クラブが運営した方が施設を有効活用できる」という意見もある一方、「クラブが公共施設を私物化している」という批判も噴出しています。

この記事では、札幌ドーム、埼玉スタジアム2002、東大阪市花園ラグビー場、ZOZOマリンスタジアムなどの事例を通じて、プロスポーツ施設における指定管理者制度の特徴と問題点を整理していきます。

  1. 指定管理者制度は「公共施設の民営化」ではない
    1. 指定管理者制度とは?
    2. 指定管理料とは?
  2. 指定管理者にはどのようなお金が入るのか
  3. クラブが求めているのは指定管理料よりも経営の主導権
  4. 最大利用者と管理者という二つの立場は、時に相反する
    1. 利用条件の公平性
    2. 会計と費用負担の透明性
    3. 維持管理と修繕負担の適正性
  5. 【事例①】札幌ドームが示す「分離しすぎる問題」
  6. 【事例②】埼玉スタジアムが示す「一体化したときの利益相反」
  7. 【事例③】花園ラグビー場が示す「約束の履行と管理者の適格性」
    1. 第2グラウンドが本来のホーム、第1グラウンドは暫定利用
    2. なぜ「第1グラウンドの乗っ取り」と批判されるのか
    3. もう一つの問題は、公費事業と民間事業の境界
    4. 花園の問題は、管理者が約束を守ることと、公共と民間の境界を守ることの両方
  8. 野球場ではなぜ問題が表面化しにくいのか
    1. ホームゲーム数が多く、施設価値をつくる主体が見えやすい
    2. アマチュア利用との共存が組み込まれている
    3. 【事例④】ZOZOマリンは「稼ぐほど公共にも返す」設計
  9. 本当に見るべきなのは「リスクとリターン」
  10. 結論――Jクラブが指定管理者になるなら、モラルとバランス感覚が問われる
  11. 主要出典
    1. 制度一般
    2. 札幌ドーム
    3. 埼玉スタジアム
    4. 花園ラグビー場
    5. 野球場・試合数

指定管理者制度は「公共施設の民営化」ではない

指定管理者制度とは?

まず、指定管理者制度とは、自治体が設置した「公の施設」の管理を、株式会社、公益法人、NPO法人、共同事業体などに担わせる制度です。

施設の所有者は自治体のままであり、施設の設置目的や基本的な利用条件も公共側が定めます。

いわゆる「公設民営型の運営」に近い仕組みですが、正確には、公共施設の管理権限を一定期間、指定された団体に担わせる制度です。

単なる業務委託とも異なります。指定管理者は清掃、警備、受付などを請け負うだけでなく、条例と協定の範囲内で施設全体を管理し、利用許可や料金収納を担うこともできます。それだけ経営の自由度と説明責任が大きくなるわけです。

指定管理料とは?

指定管理者へ自治体から支払われるのが「指定管理料」です。

これは、開館、維持管理、安全管理、一般利用への対応など、自治体が求める管理業務を遂行するための対価として自治体から支払われる費用です。政策的に費用を補填する面はありますが、制度上も会計上も、単純なクラブへの「公金投入」とは異なります。

一方、利用料金制を採る施設では、利用者が支払った施設利用料金を指定管理者の収入にできます。さらに、協定で定められた管理業務とは別に、指定管理者の企画と責任でイベント、飲食、物販、広告などの「自主事業」を行える座組の場合もあります。

これらの組み合わせは施設によって異なります。多くのサッカースタジアムのように指定管理料を受け取りながら利用料金も得る施設がある一方、ZOZOマリンスタジアムのように指定管理料を受け取らず、利用料金と自主事業の収益で管理費を賄う施設もあります。

また、収益性が高い施設では、指定管理者から自治体へ納付金や利益還元を支払う場合もあります。

したがって、公平な制度利用がなされているかは、指定管理料があるか、ないかだけでは、制度が公平かどうかは判断できず、座組全体を複合的に見ていく必要があります。

指定管理者にはどのようなお金が入るのか

プロスポーツ施設のお金の流れを考えるときは、少なくとも「自治体」「指定管理者」「クラブ・球団」「一般利用者・観客」の4者を分ける必要があります。

指定管理者に関するお金の流れ

ここで複雑になるのが、クラブと指定管理者が同一である場合です。

見かけ上は同じ組織の中にあっても、「興行主として施設を使う立場」と「公共施設を管理する立場」は、会計と意思決定の両面で分けなければなりません。

また、チケット、広告、命名権、飲食、物販、駐車場、VIP席、イベントなどの収入を誰が受け取るのかは、条例、募集要項、基本協定、行政財産の使用許可などによって変わります。

これらをすべて「スタジアム収入」という一語でまとめてしまうと、公共事業と民間事業の境界が見えなくなり、それが問題として指摘される場合もあるのです。

その具体例は、後述する事例で見ていきましょう。

クラブが求めているのは指定管理料よりも経営の主導権

近年では、施設の最大利用者であるプロスポーツクラブが自ら指定管理者になる場合が増えています。

プロスポーツクラブが指定管理者になりたい理由は「自治体から指定管理料をもらえるから」だけではありません。

クラブが求めているのは、むしろスタジアム経営へのコントロールです。

施設を借りるだけでは、試合日時、看板、売店、観客動線、照明、芝生、VIPエリア、非試合日のイベントなどを、その都度施設側と調整しなければなりません。

クラブが管理に入れば、試合日と非試合日を一体的に設計できます。また、飲食、物販、広告、イベントなどの周辺収益を取り込み、スポンサー営業と施設営業を束ねることもできます。施設全体の演出や接客を改善する余地も広がります。

つまり、指定管理者になることは、「スタジアムを借りる側」から「365日、スタジアムを経営する側」へ近づくことを意味します。

これは、自治体側にもメリットがあります。施設の最大の興行主が運営に入れば、顧客情報、スポンサー網、興行ノウハウなどを利用促進に生かせます。稼働率、周辺消費が伸びれば、自治体が自ら運営するよりも利用者満足度が高くなり、指定管理料の削減や納付金の増加につながる可能性もあります。

利用と管理の一体化によって得られる便益は確実にあります。一方、そこには「利益相反」という問題が常にはらみます。

これをどのように管理するかが指定管理者制度のポイントです。

最大利用者と管理者という二つの立場は、時に相反する

クラブが最大利用者であると同時に指定管理者でもある場合、二つの異なる立場を持つことになります。

利用者としては、できるだけ安く、希望する日に、優先的に施設を使いたいと考えます。
一方、管理者としては、施設収入を確保し、条例に従って他の利用者を公平に扱い、施設を長期的に保全しなければなりません。

この二つの利害は一致するとは限らず、時に相反します。

そこで確認すべき点は、大きく三つに分けられます。

利用条件の公平性

  • クラブ自身が支払う利用料金は、条例や他の興行との比較で適正か
  • 利用料金の減免がある場合、政策目的と算定根拠は明確か
  • 日程や設備利用で、一般利用者や他の興行主より不合理に優先されていないか

会計と費用負担の透明性

  • クラブの興行事業と指定管理事業の収支、預金、契約、人員を区分しているか
  • 自主事業の人件費、光熱費、清掃費を指定管理業務側へ不合理に付け替えていないか

維持管理と修繕負担の適正性

  • 当期利益を増やすために、必要な維持管理や小修繕を削っていないか
  • 指定期間終了後に自治体負担となる大規模修繕へ、不具合を先送りしていないか

これは、特定のクラブによる不正を疑う話ではなく、制度の構造上起こり得る潜在的な利益相反と、資産を所有しない運営者に生じ得るモラルハザードの問題です。

逆にいえば、利用料金の決定手続、第三者を含む利用調整、部門別会計、共通費の配賦基準、修繕計画、情報公開、利益還元のルールが整っていれば、クラブの運営能力を生かしながらリスクを抑えられます。

次章からは実際の事例をもとに、指定管理者制度のメリットとデメリット、制度上のリスクを紐解きます。

【事例①】札幌ドームが示す「分離しすぎる問題」

まずは、一つ目の事例は札幌ドームです。

札幌ドームの指定管理者は、第三セクターの株式会社札幌ドームです。

札幌市の評価資料によると、これまでも常に非公募で株式会社札幌ドームが指定されてきており、2023年度からの5年間も非公募で指定されています。札幌市はその理由として、プロ野球、プロサッカー、国際大会、コンサート、展示会などの利用を公正・中立に調整する必要性、開業以来の運営ノウハウ、第三セクターとしての経営、利益を市へ還元してきた実績などを挙げています。

この説明には一定の合理性があります。複数の利用者が競合する大規模公共施設で、特定の球団やクラブの都合だけで日程や料金が決まることは望ましくありません。札幌市と札幌ドーム側が重視していたのは、多様な利用者に対する中立性と公平性、長期的な施設保全、そして自主事業で得た利益の市や施設への還元です。

一方、日本ハムから見れば、自らの試合が集客、スポンサー、飲食、広告など、札幌ドームにおける大半の価値と利益を生み出しているにもかかわらず、球場全体の収益や顧客体験を自ら設計できず、十分に受け取ることもできない構造でした。

球団が生み出した価値を球場への再投資や球団経営へ循環させるには、球団と球場の一体経営が望ましいと考えるのは自然です。

つまり、両者が目指したものは異なっていました。

  • 札幌市・札幌ドーム側は、公共施設としての中立性、公平性、施設保全、市への利益還元を重視
  • 日本ハム側は、球団と球場を一体で経営し、自ら生み出した価値を施設と球団成長へ循環させたい

どちらかが一方的に不合理だったわけではありませんが、この二つの経営思想を同じ施設の中で両立させることは困難でした。

日ハムが札幌市に対し、自身の指定管理者化を要望していたという話もありますが、前述のとおり非公募でほぼ自動的に確定する状況だったため叶わなかったのでしょう。株式会社札幌ドームの運営に札幌市の元幹部が多く含まれていたことなどから、市にとっての重要な天下り先になっていた可能性もあるかと思います。

また、民間のノウハウを取り込まず、第三セクターが既存収益内での利益最大化を目指した結果、ペラペラと悪評の立った人工芝など設備投資が後手に回ったこともありました。

そのような事情から、日本ハムは2018年に北広島市への移転を決め、2023年にエスコンフィールド北海道を開業したわけです。日本ハムが新球場で、球団を筆頭株主とする事業会社を事業主体とし、球場を保有・運営する方向へ進んだことは、球団による新球場建設の発表から確認できます。

この事例で浮かび上がる論点は、公共施設としての中立性と、球団・球場の一体経営との間に生じる「分離のコスト」です。

公共施設としての中立性を重視してクラブと運営を分離しすぎることにもリスクがあるのです。

具体的には、施設価値を生み出す利用主体と経営主体がずれてしまうと、利用側における施設の継続利用に対するインセンティブが弱くなり、不満の原因となり、離脱の可能性を高めます。

札幌ドームは、「利用者と管理者が同じでは危ない」という議論の反対側にある事例といえます。

【事例②】埼玉スタジアムが示す「一体化したときの利益相反」

次は浦和レッズの指定管理者落選で話題になった埼玉スタジアム2020です。

埼玉スタジアム2002公園では、浦和レッズが2020年度から2024年度まで、県公園緑地協会を代表とする指定管理共同事業体の構成員でした。クラブは、トイレ改修、LEDリボンボード、飲食、非試合日のイベントなどに取り組んだと説明しています。

浦和レッズは2025年度以降の指定管理にも応募しましたが、最終的には別の共同事業体が選ばれました。埼玉県の選定結果では、選定された団体が113.9点、その他の団体が110.4点で、僅差の結果でした。

注目すべきなのは、県の評価コメントです。

この事例で指摘されたポイントは、最大利用者が管理者側に入ることで生じる利益相反と、その統制方法が十分に示されていないことです。

不選定側の提案について、「指定管理者と利用者が明確に区分できていない」「公平な対応が十分明確ではない」「利益相反となっていないことが十分示されていない」という趣旨の評価が記されています。

この評価は、「浦和レッズが不正をしていた」という認定ではありません。県は、過去の管理については利用の公平性を評価していました。新しい指定管理者の選定において、最大利用者が管理側に入る構造をどのように統制するのか、その説明が十分ではなかったということです。

しかも、浦和レッズは施設経営にとって極めて重要な顧客です。

埼玉県議会で県は、2019年度の浦和レッズ戦による収入が施設全体の42.5%を占め、仮にクラブが移転すれば、23試合、約4億2,700万円の収入が失われるとの試算を示しています。クラブの知見を施設経営から切り離すことも合理的とはいえません。

要するに、論点は「クラブを入れるか、排除するか」という二択ではなかったのです。

問われていたのは、クラブ自身の予約や料金決定から利害関係者を外す、指定管理部門を組織・会計上分ける、第三者が運用を検証する。こうしたガバナンスの仕組みを選定段階から示せるかでした。

埼玉スタジアムの事例は、一体運営が生む価値と、一体化によって生じる利益相反のバランス調整の難しさを示しています。

【事例③】花園ラグビー場が示す「約束の履行と管理者の適格性」

三つ目の事例は、FC大阪の問題で何かと話題に上がることのある、”ラグビーの聖地”こと花園ラグビー場です。

花園ラグビー場を含む花園中央公園エリアでは、FC大阪、HOS、天正を構成員とする「東大阪花園活性化マネジメント共同体」が管理に関わりました。公園全体ではPark-PFIを含む官民連携が進められ、指定管理業務と民間の自主事業が同じ場所で展開されています。

この事例には、二つの論点があります。

一つは、FC大阪が約束した第2グラウンドの整備と、その完成まで認められた第1グラウンドの暫定利用です。

もう一つは、指定管理業務と自主事業の費用をどう分けるかという会計上の問題です。

第2グラウンドが本来のホーム、第1グラウンドは暫定利用

FC大阪と東大阪市は2019年11月、老朽化した花園ラグビー場第2グラウンドを、観客席5,000席以上のスタジアムに整備し、市へ寄付する協定を結びました。

この枠組みでは、FC大阪のホームグラウンドは第2グラウンドです。第1グラウンドの使用は、第2グラウンドが整備されるまでの便宜的、暫定的な措置として認められました。2024年12月の記者会見でも、東大阪市長は、「施設が完成すれば基本的に第2グラウンドで試合を行い、すべての試合を第1グラウンドで行うことはあり得ない」との認識を示しています。

ところが、当初は2021年12月の完成を目指していた整備が一向に進まず、期限は2023年3月まで延期されました。それでも工事は行われない一方、FC大阪は第1グラウンドでホームゲームを続けました。

コロナ禍、建設資材の高騰、資金不足といった事情はあったものの、FC大阪が公表した2024年12月の再協定では、東大阪市長が「この5年間、第2グラウンドの改修が止まった状態」と説明し、FC大阪の社長も、協定を締結したものの「行動が伴わなかった」として謝罪しています。

要するに、問題は単に整備が遅れたことではありません。第2グラウンドの整備を前提に認められた第1グラウンド利用の利益だけが残り、その前提となる約束の履行が長期間、後ろ倒しになったことです。

なぜ「第1グラウンドの乗っ取り」と批判されるのか

この状態が、第1グラウンドの「事実上の恒常利用」や「乗っ取り」だと批判される背景になっています。

もちろん、FC大阪が第1グラウンドを法的に占有したわけではありません。また、FC大阪は単独の指定管理者ではなく、共同事業体の一構成員です。第1グラウンドの利用を認め、履行を監督してきた東大阪市にも責任があり、市長自身も市側の一定の責任を認めています。

それでも、この経緯が批判を招くのは当然です。

この経緯は、FC大阪が指定管理共同体の構成員として適格なのか、正面から疑問を生じさせます。

FC大阪は、花園を利用する最大級の当事者であると同時に、施設を管理する共同体の側にも入っています。そのクラブが、第2グラウンドの整備を約束して第1グラウンドの暫定利用を認められながら、整備を実現しないまま利用を継続すれば、暫定措置を既成事実化しているように見えます。「整備の約束と指定管理者側の立場を、クラブに都合よく利用している」と疑われても不思議ではありません。

意図的な「悪用」までを裏づける資料はありません。しかし、利益相反を疑われる立場にある以上、約束を履行できる能力と姿勢、他競技を含む利用調整の公正さは、指定管理者側の適格性を判断する核心です。整備の遅延を外部環境だけで説明し、暫定利用だけを続けることは許されません。

2024年12月の再協定では、FC大阪が5,000席の観客席と電光掲示板を備えた施設を2028年3月末までに建設し、市へ寄付することが改めて定められました。完成できないと市が判断した場合、市は花園ラグビー場をFC大阪のホームスタジアムとして認めないことができ、FC大阪は異議を申し立てられないとされています。

その後、東大阪市は2025年6月にFC大阪の改修計画を了承しました。公表された工程では、2025年7月から基本設計に入り、2026年11月に着工し、2028年3月に完成する計画です。FC大阪は2026年にも第1グラウンドでホームゲームを開催していますが、これは再協定に基づき市が完成まで認めている暫定利用です。

したがって、問われるのは、今度こそ工程どおりに第2グラウンドを完成させ、第1グラウンドの暫定利用を本当に暫定で終わらせるかです。

再協定の履行は、FC大阪が施設管理に関わる者として信頼に値するかを測る試金石です。

もう一つの問題は、公費事業と民間事業の境界

東大阪市の2023年度包括外部監査は、2022年度における共同体の収支を監査しています。

報告書に掲載された収支では、指定管理業務の収入が約1億7,454万円、自主事業の収入が約5,084万円でした。収支差額は、それぞれ約1,202万円と約404万円です。

監査では公費で支える指定管理業務と、民間が利益を得る自主事業との境界の曖昧さを問題点として指摘されました。

共同体の正職員4人の基本給は全額が指定管理業務側に計上されていました。一方、その法定福利費は収入比に応じて、指定管理業務と自主事業へ配賦されていました。給与と福利費で配賦基準が一致していなかったのです。

また、光熱水費は全額が指定管理業務側に計上され、自主事業側には配賦されていませんでした。監査は、合理的な説明がない限り適切とはいい難いとし、市が配賦方法を検証し、誤りがあれば過年度の収支報告や指定管理料の精算を検討するよう求めています。

この事例について、「FC大阪が公費を不当に流用した」と断定はできません。指摘の対象は、共同事業体の費用配賦と、それを十分に検証していなかった市の監督です。監査も公費の流用を認定してはいません。

それでも、この事例は重要です。

同じ職員が同じ施設で働き、同じ照明、空調、清掃、設備を使う以上、公共の指定管理業務と民間の自主事業を、会計上完全に切り分けることは簡単ではありません。だからこそ、「分けています」という説明だけでは足りません。

勤務時間、使用面積、開催時間、電力計測、売上など、費用の性質に合った配賦基準を事前に定め、継続して適用し、その根拠を記録する必要があります。

それができなければ、資金の流用や付け替えの疑いを晴らすことはできません。

花園の問題は、管理者が約束を守ることと、公共と民間の境界を守ることの両方

つまり、花園で問われているのは、利用者でもある管理者が、自らの便益の前提となった約束を履行するか。そして、公費事業と民間事業の境界を、具体的な配賦ルールで明らかにできるかです。

野球場ではなぜ問題が表面化しにくいのか

プロ野球球団が球場運営に深く関わっていても、Jリーグほど「公共施設の私物化」という批判が前面に出ません。

その理由は、単に競技の文化が違いや、自前スタジアムが多いからだけではなく、事業構造の違いにもあると考えられます。

ホームゲーム数が多く、施設価値をつくる主体が見えやすい

Jリーグの2026/27シーズンは38節で、各クラブのリーグ戦のホームゲームは原則19試合です。カップ戦などを加えても、NPBの2026年度公式日程に示された1球団143試合、ホーム71試合または72試合との差は大きくなります。

野球では、球団が年間70日以上の主要興行を持ち込み、広告、飲食、物販、放映、スポンサーなどの価値を継続的に生み出します。球団が施設価値をつくる最大の事業主体であることが見えやすく、球団が球場経営にも関わる経済合理性を説明しやすい構造です。

ただし、試合数が多ければ公共負担が自動的に認定されるわけではありません。施設の占有度合い、他の利用者との調整、修繕負担などは、別に検証する必要があります。

アマチュア利用との共存が組み込まれている

野球場は、高校、大学、社会人、少年、草野球などの利用体系を持つことが多くあり、公共利用との共存が図られています。

ZOZOマリンスタジアムでも、一般、高校・大学、小中学生に分けた利用料金が公開されており、2023年度には、球団練習などを除く一般利用の利用者・観客数が約10万4,000人と報告されています。

これは、プロ球団が管理に関与しながら、アマチュア利用を組み込めることを示す一例です。

また、グリーンスタジアム神戸の名で知られた、現在のほっともっとフィールド神戸も参考になります。神戸市の資料によると、この球場は指定管理者制度ではなく、都市公園法に基づく管理許可によりオリックス野球クラブが運営しています。ここでは、プロ球団の運営と一般利用を両立させる料金設計が確認できます。

神戸総合運動公園の利用案内では、一般利用者も抽選などを通じて球場を予約できます。通常の体育利用に対し、営利目的の体育利用は基本使用料の3倍、営利目的かつ体育目的以外の利用は4倍です。入場料を徴収する場合は、さらに入場収入の10%が加算されます。

つまり、公共施設として一般・アマチュア利用の入口を残しながら、プロ興行など収益を生む利用には高い料金を課す仕組みです。球団が運営に関わっていても、営利利用と市民利用を同じ条件で扱わず、利用目的に応じた負担の差を明示し、市民球場としての建付けが遵守されています。

【事例④】ZOZOマリンは「稼ぐほど公共にも返す」設計

ここでもう一つ事例を紹介します。
千葉ロッテマリーンズの本拠地であるZOZOマリンスタジアムです。

ZOZOマリンスタジアムでは、千葉ロッテマリーンズが指定管理者になっています。

この事例の特徴は、施設運営上のリスクを球団が相当程度負う一方、収益も公共側に還元するインセンティブ設計です。

千葉市の2023年度評価によると、千葉市からロッテへ支払われる指定管理料はゼロです。
利用料金収入は約4億8,800万円だった一方、指定管理業務の支出は約10億4,000万円で、指定管理業務単体では約5億5,200万円の赤字でした。

しかし、自主事業は約36億8,300万円の収入、約12億1,300万円の支出となっており、大きな黒字を生み出しています。指定管理業務と自主事業を合わせた全体の収支差は、約19億1,800万円でした。

つまり、千葉ロッテは指定管理料を受け取らず、指定管理の必須業務で約5億5,200万円の赤字が出ても、市に追加負担を求めるのではなく、球団興行や広告などの自主事業の黒字で吸収しています。

球団が施設運営から得られる上振れを受け取る代わりに、運営上の下振れも相当程度引き受ける構造です。

さらに、広告看板事業では、行政財産の目的外使用料を市へ支払っています。広告収入の15%を上乗せする仕組みがあり、2023年度は、そのうち約2億2,265万円が利益還元相当額とみなされました。広告事業を除く剰余利益についても、一定の計算式に基づいて還元額を算定します。同年度は、すでに納付された広告看板の目的外使用料に基づく還元相当額の方が大きかったため、剰余利益に基づく追加納付は発生しませんでした。

したがって、「指定管理業務の赤字を自主事業の利益で埋めるだけ」ではありません。赤字を球団側で吸収したうえで、収益の一部を公共側にも還元する仕組みになっています。

2026年度以降の指定管理者選定でも、千葉市は、プロ野球の興行主と指定管理者が同じであることにより、市民球場とフランチャイズ球場の利用調整、試合日のイベント、飲食、物販などを一体化できる点を評価しています。

これは、球団が稼ぐほど、自治体にも一定の還元が生まれる方向へ、双方のインセンティブを近づけた例と評価できます。指定管理料がゼロであるため、運営上のダウンサイドも相当程度、球団側が負っています。

ただし、この仕組みも万能ではありません。土地と建物は公共資産であり、大規模更新の最終的な負担は別の問題です。過去の選定委員会でも、球団が利用者と管理者を兼ねることや、市の投資と球団利益の関係をどのように考えるかという疑問が示されています。

野球場であっても、利益相反がなくなるわけではありませんし、明朗な会計は必要です。
契約によって、その関係を見えやすくし、利益を共有しやすくしているのです。

本当に見るべきなのは「リスクとリターン」

ここまで見てきた事例は、それぞれ異なる問題点と論点を示しています。

事例この事例から見える論点
【事例①】札幌ドームクラブと施設経営を分離しすぎる問題
【事例②】埼玉スタジアムクラブと運営を一体化したときの利益相反
【事例③】花園ラグビー場暫定利用の既成事実化と、公費事業・民間事業の境界
【事例④】ZOZOマリンスタジアム球団と自治体の利益を近づけるインセンティブ設計

クラブを管理から外せば、中立性は高まりやすくなります。
しかし、施設価値を生み出す主体の知見と投資意欲が失われる可能性があります。

クラブを管理に入れれば、一体経営を進めやすくなります。
その一方で、自己利用の料金、日程、費用配賦などを監視する必要性が高まります。

独立採算にすれば、自治体の運営負担は減ります。
ただし、長期の資産更新まで民間側が負担するとは限りません。

このように、スタジアム運用実態を評価するときに大切なのは、金額や座組を片側だけから見ないことです。

指定管理料が1億円でも、指定管理者がそれ以上の運営リスクや修繕負担を引き受け、一般利用を確保しているかもしれません。

指定管理料がゼロでも、自治体が巨額の改修費を別途負担し、施設収益の還元を受けていなければ、公共側の負担が小さいとはいえません。

また、指定管理者が大きな利益を出していても、それが利用促進や民間投資の成果であり、契約に基づいて公共へ還元し、資産を適切に保全しているなら、制度はうまく機能している可能性があります。

結論――Jクラブが指定管理者になるなら、モラルとバランス感覚が問われる

Jクラブが指定管理者になると、クラブとスタジアムの一体運営が可能になります。顧客理解、集客、スポンサー営業、施設活用、ファン体験など、クラブの知見を施設経営へ直接生かせるからです。

同時に、施設の最大利用者が管理者になるという、構造的な利益相反も抱えることになります。自らの利用料金、日程、費用配賦、修繕などを巡り、利用者としての利益と管理者としての責任がぶつかります。

つまり、Jクラブが指定管理者になると、一体運営のメリットと利益相反のリスクが同時に生まれます。

指定管理料は、公共施設の管理業務と引き受けるリスクへの対価です。クラブの補助的な収入源として扱うべきものではありません。自らの利用料金や日程を不合理に優遇すれば、利益相反を疑われます。

収益性を高めながら一般利用を確保し、利益を得る一方で赤字や修繕のリスクも引き受ける。その意味で、指定管理者制度は、自治体と運営者の双方に非常に難しいバランスを求める制度です。

Jクラブが指定管理者になると問われるのは、スタジアムを「自分たちのもの」として育てる当事者意識と、「自分たちだけのものではない」と理解する公共性を両立できるかなのです。

主要出典

制度一般

札幌ドーム

埼玉スタジアム

花園ラグビー場

野球場・試合数

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